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復活へ(8) [脳出血から2年]

待ち望んでいた桜ですが、散り様は相変わらずの潔さです。
決してネガティブな気にならないのは、新緑の沸き上がる季節を予感させるからでしょうか。

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たとえそれが遊びでも良い。
転げ落ちて行くばかりの時期に、とりあえず憂鬱さを紛らわせてくれるなら。

スクーターに乗れると分かったのは大きな収穫で、更にマニュアルミッションも試してみた。
左足は以前のままだからギアシフトに問題はないが、右足をステップに乗せる感覚が分からない。
だけど自分の足をステップに乗せるのなんて、殆ど反射に近い動作だったけど、それを意識してやるようになるとは。
上がるには上がるのだが、本当に上がっているのかが分からない。目で確かめないと。
だからステップに足を乗せても、それ以上がままならないのだ。
フットブレーキに困る。

ただバイクにおいて制動の8割はフロントに有るから、リアブレーキは極論すれば補助みたいなものだ。
そうは言っても何とか右足でブレーキを踏みたいので、まずモンキーを広場に持ち出し何度も練習した。
ステップに足を乗せた感じ、ブレーキペダルを踏む感じ、痺れの中から僅かな違いを見つける。
それを何日も繰り返すと、何となく後輪だけの制動も出来る様になった。
小さいバイクとは言えマニュアルミッションの、モンキーに乗れると言う自信がついてきた。

正し練習は体調次第で、全く動く気にもならない数日が、月に2・3度必ず来る。
血圧を下げるために強い薬を処方されていて、まだ残る脳出血後のぼんやりした感覚も手伝い、何が本当の自分なのか分からない。
強烈な脱力感に襲われる日は、嫌な事ばかり終日考える。
一体俺は何をやっているのだ。この痺れる身体はどうなるのか。何時仕事に復帰出来るのだ。

そして少し体調が上向くと、それらを振り切るように練習。
そんな生活を繰り返し、何時の間にか数ヶ月が経ち、夏がやって来た。

右半身に影響が出るのは、運動系ばかりでなかった。
幸い視覚には殆ど影響は無いが、聴覚や味覚には少なからず有る。
特に味覚、辛目が好きなのに普通の辛口カレーさえ苦痛になっていた。
旨かったカレーを食べるのが辛くて、子供用なんて馬鹿にしていた甘口しか食べられない。
そして最も衝撃的だったのは、酒が旨くないのだ。

「酒が呑めないなんて、人生の半分を損しているぞ」そう下戸を揶揄するほど、とにかく酒は好きだった。明日死んでしまうかも知れない、呑まなければ損だ位に。
それまで生きてきたどんな場面でも、必ず酒が有ったのだ。
悲しさや苦しさを紛らわし、楽しさや満足を数倍にしてくれたのが酒で、もう年に370日は呑んでいたかも。
脳がそれらを覚えこんでいるから、こんな時期だからこそ呑むのだが、全く旨くないし酔えない。
こんな筈じゃないで呑むから、悪循環に陥り悪い酒にしかならない。

幸か不幸か肝臓は相変わらず丈夫なようで、旨さや酔いが何時までも訪れないと、さらに煽るように飲んだりする。
肝臓と対照的に胃腸は強くないので、瞬く間に食欲がなくなり、それでも呑むから痩せ型がより体重を減らすばかり。こうなって来ると生活が荒れ、修羅場を迎えてしまう。

今から思うに、最も思い出したくない時期に入る。
現場で倒れてから半年、盆踊りが始まった。



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