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復活へ(1) [脳出血から2年]

そう言えば今日は、ニャンニャンニャンで猫の日か。忘れもしないヘンな記念日になったものだ。
脳出血で突然倒れたのが2年前、2016年の2月22日だった。
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現場の朝は早い。大手重工業社の下請けである我々は毎日、朝の6時半には現場事務所に詰めていた。
清掃、当日作業の確認、各種書類の作成、そして8時5分前のラジオ体操からやっと現場が始まる。
その後の長い朝礼の挨拶に、忘れられない「今日はニャン・・・」が含まれていたのだ。

現場作業を監督してまわり、そろそろ10時の休憩かなと思い始めたころ、急に周りの空気が揺らぎ始めた。
何が起こったか理解できず、足取りのふらつきに最初は地震かなと思ったほどだ。
しかし近くの職人に話しかけるも上手く口が回らず、何でもない段差の躓きで流石に自身の異変を認めた。
その後何とか自力で事務所に戻るが、激変した様子に気づいた同僚に運ばれた病院で、意識が途絶えたらしい。

夢にしてはやけにリアルだな・・・何かの医療ドラマで観た光景の様だし、単調に刻み続ける電子音も微かに聞こえる。
ぼやける視界に映るディスプレイでは、規則的な連続する波形と、幾つかの数値がカラフルに踊っていた。
鼓動するハートマークらと並んだ三桁の数値、「うーん、何この二百なんたらは」、そしてまた暫し眠ったようだ。

はっきり目覚めたのはその何時間後かは分からないが、ICU・集中治療室のベッドに横たわる自分と、体のあちこちに張り巡らされた管や電極を確認できた。
この時点でやっと何らかの重大な事が起こり、意識を失いここに運ばれたらしいと分かる。
しかし特に苦痛は無い不思議な感覚に見舞われるが、260前後を示すディスプレイの血圧値には我ながら過ぎる異常を覚え、脳出血であったと告げられても変に納得していた。
「そうか、それで俺はここに居る訳だ」と。

数日後のMRI検査結果を熟視した医者は、出血箇所の収束の早さと、歩き回る私を見て少し驚き気味に言った。
半身不随等でもっと不自由な体になっても、当たり前な程の出血が有ったのに、重要部位をほんの数ミリ避けているかなり幸運な例だと。MRI画像で早くも痕跡に変わりつつある、脳出血の場所と経緯の解説をしながら。
そしてICUから大部屋に移される。

歩き回ると言ってもフラフラで危なっかしいが、発症後数日で自力歩行が出来ていたし、次第に意識もはっきりしてくる。ただし呂律が回らない。自分では言葉を発しているつもりなのに、実際には口が動いていない事にも気づいた。
しかし大丈夫だ。医者が言うように、俺は復活が早いのだ。

五十年以上生きてきて初めての事態の連続に、戸惑いながらも楽観視出来ていたのは、自分は半年程度で復帰する変な自信が有ったから。特に確固たる根拠は無かったけれど、これまで幾つもの山や谷を経験していたからだ。

しかしそんな経験など全く役に立たない、深い谷が待ち受けていようとは想像すら出来なかった。


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