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マフラーについて [バイク・クルマ]

この所まとまった降雪が続いたりして、バイクで走るのを躊躇させる日々が続いているね。
何よりとっても寒いもの。それでマフラーについて、ちょっと書いてみよう。

マフラーを交換して話題になるのが、高回転は良くなったけど下がスカスカ、かな。
その理由として耳にするのは「抜けが良くなり過ぎたから」が多いよね。
しかし大口径マフラーに換えて、「俺のバイク(車)はぶん回し仕様だ」なんて、多少の問題は高回転で鋭くなった吹けや、心地良くなった排気音にかき消されるかも。
でも何で大口径マフラーにして、抜けが良くなると高回転向きになるの?低速が無くなるの?と疑問の湧く場合が有るかも知れない。
いくら調べてみてもなかなか腑に落ちない、そんな時の参考になれば幸いだ。

口径の大小を問わず、どの回転域でも排気がスムーズに通ってくれた方が、良いマフラーだと誰でも思うよね。
マフラーは排気を放出するパイプ、ただチョッとだけ、この普通の考えを一旦保留にしてみよう。
マフラーは排気を補助的に吸う場合も有る、そんな角度で考えてみると理解し易い場合も有るからだ。
それとマフラーは単なるパイプではなく、キャブやインジェクションと同様に『装置』だ。
一般的にマフラーは排気管(エキパイ)や消音器(拡張とか膨張室・吸音材・バッフル)等で構成されているけど、特に市販車では区分けしにくいから、総称であるマフラーで話を進めよう。
そして2ストは別の機会とし、今回は4ストを中心とした。

では、ちょっとした例え話を。

人が粉末を吸おうとした場合、普通ストローを使うと思う。
間違っても掃除機のホースを使おうとは思わないよね。
出来る人も居るだろうけど。
じゃあ、掃除機で吸おうとした場合、普通それのホースを使うはずだ。
これもどうにかストローを接続して出来なくは無いけど。
どちらの場合も何故無理してやらないのか?効率が良い方を使うのが当たり前だからね。
簡単だけど、これでまずマフラー径についての問題はとりあえず一段落。

次に、何故マフラーが排気を吸うのかについて。

マフラーは排気放出だけの装置ではなく、シリンダーから排気の吸い出しも行っている。
一見、排気が出ているだけのマフラーなのに、何故?何処に?吸い出す力が発生するの?
だよね。
分かり難いかも知れないので、また例えば次を参考に。

180204.jpg

tv asahi ナニコレ珍百景コレクションより


トンネルをマフラーとすれば、列車を排気の塊に置き換えてみてね。
トンネルを勢いよく走る列車の様に、マフラーを勢いよく流れる排気の塊なのだ。
これで起きるのが 排気慣性。
ちなみに排気は連続した均一な流れではなく、断続的に1回1回の排気が塊の様に流れる。
これで起きるのが 排気脈動。

「ちょっと待って、混合気が燃焼(爆発)して急激に膨張するのに、列車の様にすんなりと出口方向だけに行くの?」
平坦な管内に燃焼後の、膨張盛んな高温の排気を吹き出しても、素直に排気の全てが出口へ向かうとは思えないよね。
でも燃焼で膨張した排気は拡張室で冷えて収縮するし、更に慣性が有るから排気は出口へと向かうんだ。
勿論エンジンの排気工程で、排気は押し出されているしね。

ただ同じレシプロエンジンでも2ストの場合は、排気経路に4ストには無い区間を設け、排気の戻りを利用し混合気の充填効率を高めたり、排気慣性を利用し掃気と排気を促進したりしている。それをエキスパンションチャンバー(拡大室)と呼ぶけれど、でも紛らわしくなるから今回は話を4ストに絞ろう。

この様にして密閉された空間内を、排気の塊が一定の方向に勢い(慣性)がついて流れると、塊の過ぎた後に(圧力の低くなった)空間が作られ、そこが次に控えている排気を呼び込むんだ。

ここで先程の粉末を吸う例を引用し、マフラーに当てはめてみよう。
弱い(人)力で控えている排気(粉末)を吸う場合は細いマフラー(ストロー)が、
強い(掃除機)力で吸う場合は太いマフラー(ホース)が、
それぞれ効率良いのが原則だ。
だからメーカーは出来るだけ、消音しつつ全域で効率が良くなる様に、多段拡張型とかの複雑な内部構造にしている。
更に排気デバイスなんかの、別な補助装置まで付ける場合も有るのだ。
また、マフラーが古くなって穴が開いてしまったら、音はうるさいのになんか力が無くなったと感じる場合があるね。これもメーカーが試行錯誤を経て作ったマフラーの、絶妙なバランスが崩れたのが原因って事も有るくらいだ。

メーカーのマフラーは複雑な内部構造だから抜けが悪い。だから低回転向きに作ってあると言うのは大間違いで、単に抜けが悪いだけのマフラー作るのなら簡単だし、構造が複雑だから抜けが悪いと簡単には決められない。
抜けと言う観点から言えば、低回転で吸いが弱い(効率が悪い)大口径のマフラーは、低回転で抜けが悪いとも言える。高回転で抜けの良いマフラーが、低回転時でも抜けが良いままでは無い。
排気が強い高回転向きにだけ作られたマフラーだと、低回転時には排気が抜け切らず、結果、新たな混合気の充填が不十分→低速で(燃焼)力が無くなる。
言い換えれば、高回転時で抜けが良いマフラーは、低回転時では抜けの悪いマフラーだ。
どの回転域でも、排気がスムーズに通ってくれるマフラーじゃない訳だね。

口径が太くなったマフラーに対して『抜けが良い』の表現は一見分かり易いけど、抜けだけで全域を説明しようとすると無理が生じてくる。
オーバーラップの話まで持ち出し「抜けが良いマフラーを付けると、低回転時には折角シリンダー内に有る混合気まで抜きすぎてしまい、低速トルクが無くなるのだ」とか、こじつけみたいなのも見受けられる。
更に、「抜けすぎると背圧や気圧が下がり、充填効率が悪くなる」とか、意味不明のまで・・・そもそもオーバーラップ時に、やり取りする吸気や排気の量なんて僅かなものだ。
そして、分かり易く機械的に働くキャブで言うと、キャブは気体に動きが有ればガソリンを噴霧し続るから、シリンダーに混合気が無くなるってことはないのに。

オーバーラップとは排気上死点において、排気バルブは完全に閉じてないが、吸気バルブは既に開き始めている状態を指す。これはそれぞれのバルブを僅かに開いた状態にして、気流を止めない、言い変えれば、せっかく得た慣性を止めないためだ。
尚、このタイミングでは吸気・排気が混じりながら続いていて、明確な区分けが出来ないから、気体の流れを気流と表現した。

ただ、抜けを用いた説明の全てを、否定している訳では無い。
気体は吹かれ(押され)たり吸われ(引かれ)たり、気象で言えば高気圧と低気圧の関係の様なものが働く事で流れているから、エアークリーナーから入ってマフラーより出るまでの連続した気流を、相対的な圧力関係→圧力差で考えないと、必ずどこかで無理や矛盾が生じてくる。
抜けが云々と言うのは単なる気体が流れる通路の性質や状態であって、それをだけを用いてマフラーを説明しようとすれば、同様に無理や矛盾が生じてくる。
また、本文で用いてきた慣性も、圧力差を生む要因の一つだ。

マフラーはシリンダーから押し出される排気を補助する装置でもあるけど、加給装置(ターボやスーパーチャージャー)の様な、他から何らかの力が作用している装置ではない。
外部からの助けが無い補助装置として、内部構造を工夫しながら発展し、4ストでは集合管が、2ストではエキスパンションチャンバーが誕生してきた。

繰り返すようだけど、外部で見える排気は、「内部の連続する力関係を経て出ているんだな」
そう考えると、装置としてのマフラーを理解し易いかも知れないね。


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